コラム

米Youtuberローガン・ポールが購入した350万ドル(約4億円)のポケモンカード初版BOXに偽物疑惑

昨年米国のYoutuberローガン・ポールが購入した350万ドル(約4億円)のポケモンカード初版BOX6箱が入っているとされる段ボール箱に偽物疑惑が浮上しました。

今回の疑惑はいくつかの証拠によって提起されています。

購入履歴

最終的にローガン・ポールの手に渡ることになったこの商品は2021年3月29日にカナダのeBay(通販・オークションサイト)に初めて登録されました。実際のページはこちら

91,300カナダドル(約832万円)で出品され、入札が出品者の希望に達しない場合にオークションを取り消すことができました。出品者はeBayの評価がほとんどなく、文法の間違いが多い出品でした。さらにオークションの開始直前にユーザー名を変更し履歴を隠そうとしたことが確認されています。

米国の多くのポケモンカードコレクターはこの出品をすぐに詐欺だと思ったようです。売り手が「一生に一度のチャンス」と、この商品の価値を理解しているのに著名なオークションハウスではなくeBayで販売していること、配送手段が安価な方法であることなど不審点が多く存在したためです。

また、この商品が出品に至るまでの変遷が不明確であったことも疑惑に拍車をかけました。通常このような高額な商品は販売されるまで誰が所有していたかなどが大まかにわかるもので、それが真正性や起源の確認に繋がります。しかしこの売り手は複数の買い手に対して異なる証言(家財道具を処理している人から購入した…自分の12歳の誕生日に贈られた…)をしています。

家財道具を処理している人 ?
12歳の誕生日プレゼント?

結局このオークションは4月9日に売り手の希望価格を大きく下回る水準で終了しました。これによって多くのポケモンカードコレクターがこの商品を偽物だと判断したことが示されました。もし本物であれば初版BOXの相場価格は43万ドル(約4900万円)を超えますが、この商品はその初版BOXがおそらく6箱入っているのに最低落札価格の91,300カナダドル(約832万円)に達しなかったためです。

このオークションでは最高値72,500カナダドル (約660万円) を付けた@psapikachuが落札者になりました。彼と売り手はeBayでの取引をキャンセルしてeBay外で落札価格以上での取引を継続することに合意しました。しかし落札者が商品を検品することを売り手が許可しなかったため、この取引は成立しませんでした。

次に売り手は@cardkahunaにこの商品を販売しました(販売価格は不明)。アメリカの買い手の元に商品は届きましたが、高価であるはずのその荷物は保険無しで配送されました。

そして、@cardkahunaは、彼と彼の友人が商品を受け取る様子の動画を撮影しました。彼らによると、Baseball Card Exchangeという鑑定会社が初版BOXの段ボール箱の鑑定に立ち会い、正規品であると述べた上で箱に自社のシュリンク包装を施したそうです。

しかし、同社は鑑定基準を明らかにしませんでした。話題のアイテムがこれだけ物議を醸すと、通常、企業は証拠を表示してそのプロセスを詳しく説明します。

@cardkahunaの映像の中で、この商品が出品に至るまでの新たな証言が明かされました。売り手が買い手に伝えたのは、カナダに家を買って、屋根裏部屋で箱を見つけたということです。これはいままでの証言(家財道具を処理している人から購入・自分の12歳の誕生日に贈られた)と矛盾しています。

この後@cardkahunaはスポーツカードコレクターの@shyne150に270万ドルで箱を売却しました。そして、ポールの購入発表動画にあるように、ローガン・ポールに350万ドルで売却されました。その都度、箱はより高い値段で転売されました。

動画の中ではこのBOXが現存する唯一の初版BOXだとされていますがこれは間違いです。これまでにもオークションに出品されていたり、著名なコレクターが所有していることを発表しています。

ラベルの疑惑

当時ポケモンカードを販売していたWizards of the Coast社の製品には製品コードとそれに対応するバーコードが記載されたラベルが貼られています。

長年にわたって販売されたポケモンカード第一弾の既知の箱には、第1版であるかどうかにかかわらず、プロダクトコード 「WOC06033」が記載されているのが確認されています。

WOC06033の記載
箱の外観

しかしポールのケースには、「WOC060331E」というコードのラベルが貼られており、これは “1st Edition”の略であると考えられます。

WOC060331Eの記載

しかし、第一弾の初版BOXで、プロダクトコードに「1E」が入っている例は知られていません。既に初版BOXを所有しているトップコレクターによるとWizards of the Coast社は、第二弾Jungleから初版に「1E」を使うようになったとのことです。

1Eが記載されているFossilの箱

さらにバーコードにも不審な点が見つかりました。商品のバーコードは、商品コードから生成されます。バーコードをスキャンすると、そのバーを英数字コードに変換してくれます。バーコード作成ツールで簡単に再現することが出来ます。

しかし、ポールの購入した商品のバーコードは、製品コード 「WOC06033」の箱と完全に一致しています。彼の購入した商品の製品コードは「WOC060331E」なので、彼のケースのバーコードは違うはずです。そうでない以上、このラベルが偽物か加工品であることはほぼ間違いありません。なぜ彼の箱のバーコードが印刷された製品コードと一致しないのか、合理的な説明はありません。

また、Wizards of the Coast社は商品のラベルに感熱印刷を使用していました。このラベルは、時間が経つと文字が薄くなり、やがて白紙になります。90年代のポケモンカードのラベルを見ると、たいてい文字が薄茶色に色あせています。ところが、ポールの箱に貼られているラベルは、まったく色あせていません。屋根裏で発見されたのなら、なおさら色あせているはずです。フォントも異なっています。

90年代のラベル
90年代のラベル
ポールのラベル

さらにポールの購入した商品のテープは、Wizards of the Coast社の商品に使われているテープとは異なります。フォントや配置が明らかに異なり、ポールの箱の文章には文末のピリオドがなく、「Seal」は正規の箱のように大文字ではありません。このテープは、商品を正規のものに見せかけるために、後から付け足されたものである可能性が高いです。

Wizards of the Coast社の箱
ポールの箱

鑑定会社の疑惑

ポールの箱を鑑定したBaseball Card Exchange社はスポーツカードの分野では大きな存在感を示していますが、ポケモンカードの認証では知られていません。

2020年6月のメールのやり取りで、同社のオーナーで鑑定担当のSteve Hartは、ポケモンについてあまり知らないことを認めています。(第一弾の名前も言えませんでした)

第1版のBOXには透明なシュリンクが巻かれているのが常識です(後の箱はシュリンクにWizards of the Coastのロゴが入っていました)。しかし彼はこれを知らなかったため鑑定の結果にも疑いがもたれます。

透明なシュリンクの初版BOX
ロゴ入りシュリンクの通常BOX

最後に

様々な疑惑を紹介しましたが、現存するものが非常に少なく資料となるものが少ないことも事実です。

今後ポールが箱を開封したりすることがあるかもしれません。今後の動向に注目しましょう。

ポール本人が反応

1月5日ローガンポール本人が反応し、鑑定会社と商品を確認すると表明しました。


source : https://www.pokebeach.com/2021/12/logan-pauls-3-5-million-base-set-case-may-be-fake-pokemon-community-uncovers-significant-evidence